「プロバイダ責任制限法」に基づいて対応すれば、投稿者が分からなくても、「送信防止請求」や「発信者情報開示請求」ができる場合があります。
インターネットの掲示板には、必ず管理人がいます。投稿者が分からなくても、掲示板の管理人に、削除依頼ができます。
プロバイダ責任制限法3条2項1号で、「他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由」があれば、削除しても良いと定められており、証拠さえ揃えれば、削除に応じてくれるのが原則です。しかし権利が不当に侵害されていることや、信じるに足りる相当の理由を証明することは、たいへん難しいです。
裁判所への通常の裁判を待っていると時間がかかります。その間にIPアドレスが消滅してしまい、特定が困難になるおそれもあります。そこで「仮処分」の申し立てという方法で、できるだけ早く削除することが可能です。
掲示板運営会社は、投稿者の情報を保有していないため、インターネットのプロバイダに個人情報を開示してもらう必要があります。
インターネットに接続する際、プロバイダ(OCN、ヤフー、So-net、BIGLOBE等)と契約しています。プロバイダは有料なので、契約者の情報を把握しており、判明したプロバイダに、その個人情報を開示してもらいます。
掲示板の管理人は、投稿者のIPアドレス(12桁の数字)とタイムスタンプ(東湖日時の記録)を把握しているため、掲示板の管理会社に、投稿者の「IPアドレス」と「タイムスタンプ」を開示するよう求めます。
12桁の数字の、インターネット上の住所のようなものです。
インターネットで情報をやり取りする場合には、プロバイダからIPアドレスを与えられて、インターネットを使用します。
IPアドレスを専用の検索サイトで検索すると、プロバイダが分かります。
更にプロバイダに対して、特定の「IPアドレス」の使用者を開示するよう求めることで、投稿者の個人情報が判明します。なお、IP アドレスの保存期間は短い(3ヵ月程度)ため、早めに対応する必要があります。
「IPアドレス」は、時間ごとに変わるため、投稿者を特定するには、使用時間を特定する必要があります。そこで「タイムスタンプ」も掲示板の管理人に開示するよう求める必要があります。
中傷記事の削除の場合と違い、プロバイダ責任制限法4条1号は、「権利が侵害されたことが明らか」で、かつ「正当な理由」がある場合にのみ、プロバイダは個人情報を開示してもよいとしています。
「損害賠償請求をするため」であれば「正当な理由」がありますが、「権利が侵害されたことが明らか」という要件については、「IPアドレス」や「タイムスタンプ」が個人情報に当たることから、裁判所が認定しなければならないことが多く、プロバイダから教えてもらえない場合があります。
サイトURLのうちドメイン部分を、Whois サービスで調べることにより、ドメイン情報、公開連絡窓口などがわかります。公開連絡窓口が、プロバイダではなく、ドメイン名の登録手続き業者であることがあるため、掲示板運営会社に連絡を取り次いでもらう必要があることもあります。