未成年者の親権者が協議に参加します。親権者も相続人の場合には、親権者の相続分が増えれば、未成年者の相続分が減るという利益相反が生じ、利害が対立することになるため、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てます。
認知症で判断能力がない場合は、家庭裁判所に成年後見の申立を行ってから、成年後見人に遺産分割の協議に参加してもらいます。
認知は、婚姻届を提出していない男女間の子の親子関係を認めることですが、亡父が認知手続をしないまま死亡しても、死亡から3年以内は、子が認知の訴えを提起して親子関係を認めてもらうことができます。
この場合、認知請求が認められると、亡父の遺産分割が終わっていなければ、認知された子を含めて遺産分割協議をすることになります。
既に遺産分割が終わっている場合で、被相続人の死亡前に認知されていたのであれば、遺産分割協議をやり直す必要があります。この場合、既に分割されてしまった財産について遺産確認の訴えや、遺産分割不存在確認の訴えを地方裁判所に提起することもあります。
また認知された子は、相続開始を知ってから5年、相続開始後20年であれば、相続回復請求権を行使して遺産分割のやり直しを求めることもできます。
なお被相続人の死亡後に、遺産分割協議が終了し、その後に裁判による死後認知がなされた場合には、遺産分割のやり直しや不存在確認ではなく、認知された子が自分の相続分に応じて、既に遺産を取得した相続人に対して、金銭的な支払いを求めることになります。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分配方法を決めることになります。
相続人の間で話し合いがまとまらない場合や、相続人の一部が話し合いを拒否する場合には、家庭裁判所への遺産分割調停の申立を検討してください。
協議が整わない場合、できれば早い段階で弁護士に相談し、協議の進め方や調停申立などの意見を求めて下さい。
相続財産になった預貯金については、かつて可分債権として当然に相続人間に分割されるので、法定相続割合に応じて、各相続人が金融機関に払戻しの請求ができるとされていました。しかし、最高裁平成28年12月19日決定は、共同相続された預貯金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはいとして、遺産分割をしなければならないと判断しました。
そのため、相続人全員で遺産分割協議をして口座から引出すか、家庭裁判所への遺産の分割の調停・審判の申立てをしなければならなくなりました。
これでは、被相続人の財産に依存して生活していた者が困ることから、急迫の危険を防止する必要がある場合に限り、遺産分割前の預金債権の仮分割の仮処分を申し立てることができるとされていましたが、要件が厳しく、生活費の確保が困難でした。
そこで、令和2年4月1日に施行された法改正により、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により預貯金を払い戻す必要がある場合には、広く仮分割の仮処分が認められるようになりました。これにより、妻は、遺産分割成立前に、亡夫名義の口座から生活費を出勤することが可能となりました。
令和2年4月1日の法改正により、各共同相続人は、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情がある場合には、仮分割の仮処分を申し立てることが可能となりました。
しかしこの場合でも、僅かな額でも申立の必要があるため、緊急事態に対応することが困難です。そこで、預金口座ごとに、一定の計算式(相続時の預貯金額×3分の1×払戻しを求める相続人の法定相続分)で算出された額(上限150万円)までは、他の相続人の承諾を得ることなく払い戻すことができることとなりました。
これにより、配偶者を含む共同相続人の間で遺産分割の合意ができない場合にも、生活費の確保のため、一定の預金の引出ができることとなりました。
金融機関に父親が死亡したことを伝えて預金口座の凍結を依頼して下さい。また金融機関に、口座の取引履歴の開示を求めて、無断で引き出した時期と額の特定をして下さい。
遺産分割の調停を申し立てると、誰が出金したか、出金は贈与ではないのかを巡り、紛糾することが多いです。この場合は、不当利得や不法行為として、地方裁判所に民事訴訟を提起することにもなります。
そして民事訴訟で、出金した預金が相続対象であるか、また不当利得であったのかを確定した後、再び遺産分割調停に戻して、解決を図ることになります。
被相続人の死亡前に、相続人の一人が預金口座から無断出金していた場合には、不当利得返還請求をすることで、取り戻すことになります。
一方、死亡後、遺産分割前に無断出金した場合にも、不当利得返還請求をすることができますが、令和2年4月1日の法改正では、無断処分した相続人以外の相続人全員が同意することで、無断処分された財産を遺産分割の対象に含めて遺産分割調停・審判をすることもできることになりました(民法906条の2)。なお、無断出金した者が、相続人の家族である場合にも、適用があります。
これにより民事訴訟を提起することなく、遺産分割調停で無断出金された金員を含めた分割協議をすることができるようになりました。
遺産分割協議書は、相続人全員が協議し、署名捺印をする必要があります。
偽造された遺産分割協議書は無効ですが、偽造された遺産分割協議書により、相続財産の預貯金を無断で引き出したり、不動産の名義を変えられる恐れがあるため、遺産分割協議書が無効であることを確認してもらう必要があります。
そこで訴訟を提起したり、遺産分割調停を申し立てて、遺産分割協議書が無効であることを主張することになります。
葬儀費用は、相続財産(負債)とはならず、誰が負担するのかについては、法律は定めていません。
葬儀を主宰した喪主が負担すべきとする考えかたや、相続人が、法定相続分に応じて、共同で負担して支払うべきとする考え方もあります。
裁判例も様々ですが、最終的に決着が付かない場合には、遺産分割調停や審判で扱うことができないため、葬儀費用を全額負担した者が、他の相続人に一部の負担を求めて訴訟を提起するか、他の相続人が、葬儀費用支払いのために被相続人名義の口座から払い戻された預金の法定相続分相当額を不当利得返還請求することになります。
いずれにせよ、そもそも葬儀費用がいくらかかったか、支払った代金が葬儀費用なのか、飲食費用や香典返戻(粗供養)費用、四十九日の法事の費用、墓石購入費用が葬儀費用に含まれるのかについても争われるため、負担をする人は、明細や領収書を取得しておく必要があります。