「業務災害」(労災保険法第7条1項1号)といえるには、「業務遂行性」と「業務起因性」が要件になります。
伝染性疾患に関する「業務上の疾病」(労基法75条2項)については、患者の診療、看護、介護を行う者(労基法施行規則35条、別表1の2、6号1)の他、病原菌にさらされる危険を内在する職種(同6号5)を含めており、バス・タクシー等の運転手、スーパー等の店員や飲食業、接客業も対象になります。
逆に、これに該当しない営業職や製造業に従事する従業員が、出張先などで感染しても、「業務遂行性」と「業務起因性」が認められない限り、労災の適用を受けるものではありません。
なお業務災害と認定されれば、治療費は全額労災保険から支給され、病気で仕事を休んでいる期間の給料の8割が支給されます。
厚生労働省によるコロナ労災通達(新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて)によると、患者の診療もしくは看護の業務又は介護の業務等に従事する医師、看護師介護従事者などが新型コロナウイルスに感染した場合には、「業務外で感染したことが明らかな場合」を除いて、原則として労災保険給付の対象になります。
「業務外で感染したことが明らかな場合」としては、接待を伴う飲食店、ライブハウス、バー、スポーツジム、劇場など、これまでにクラスターが発生している施設による感染が考えられます。
他方、医療・看護施設の事務職員のように感染患者と濃厚接触する可能性が高い患者受け入れ医療施設で働く者や、維持隔離場所とされた宿泊施設で働く者は、医療従事者以外の労働者ですが、感染経路が特定され、感染源が業務に内在していたことが明らかであれば、労災保険給付の対象となります。
それ以外の職場で働く者について、感染経路が判明しない場合でも、個々の職場において、複数人の感染者が確認された労働環境下での業務や、顧客との近接や接触の多い労働環境下での業務であれば、潜伏期間の業務従事状況や一般生活状況を調査し、医学専門家の意見も踏まえて、業務との関連性 (業務起因性)が認定される場合があります。
なお、速やかな補償を受けることを目的とするのであれば、4日以上連続で業務に従事できなかった場合には、労災に当たらずとも「健康保険の傷病手当金」を受給することができます。傷病手当金については、各健保組合に相談してください。
被用者の保険に加入している場合、新型コロナに感染して労務ができない従業員は、療養のため労務ができなくなった日から3日を経過した日から、直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2の金額が、傷病手当金として支給されます。
また労務ができない期間には、発熱などの症状で自宅療養した期間も含まれます。
詳細は、健康保険組合に確認して下さい。