患者が判明した場合の対応

感染・濃厚接触の判明

感染の疑いのある者への就業制限

使用者は、従業員が新型コロナに感染し、またはその疑いがあれば、直ちに就業制限ができるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症は、感染症法6条8号の指定感染症に当たるため、感染者は法律によって就業が制限され、たとえ会社が予防措置を講じたとしても、就業させることはできません。
また新型コロナは、労働安全衛生法の「伝播の恐れのある伝染性の疾病」に当たらないので、産業医などの意見を確認する必要もありません。
もっとも、感染症法により行政が就業制限や入院勧告するのは、飲食物に直接接触する業務および接客業その他の多数の者に接触する業務に従事する者に限定されています。
しかし、飲食物に接触する業務や接客業に当たらなくとも、職場環境と労働者に関して安全配慮義務を負うという観点から、使用者から感染従業員に出勤停止の業務命令を発することを検討してください。また、産業医などへ相談することが望まれます。

濃厚接触者の公表

社員に濃厚接触者が出た場合に、社内公表する場合の注意点はありますか。

個人情報の保護という点では、同一の事業者内で個人データを提供することは、第三者提供とはいえないため、本人の同意なく社内で公表することができます。
また、当該事業者内で2次感染を防止したり、事業活動の継続のために必要であれば、本人の同意を得る必要はありません。
しかし、社内公表によりプライバシーが害される恐れがあること、社外に情報が流出して、プライバシー侵害がより拡大する恐れがあること、事業所内のどの辺りで感染拡大の危険が生じているかを把握できれば予防や対応が可能であることから、罹患者が誰であるかを特定できる具体的な情報の公表は可能な限り回避し、限られた範囲に止める必要があります。

職場近隣での感染者の発生

職場の近隣で感染者が出た場合、従業員に一方的に帰宅命令や自宅待機命令を出すことは可能ですか。

コロナ対応のため自宅待機命令を出すことは、感染予防の合理的目的と必要性があるため、可能です。
従業員から就労を請求されても、就業規則等に特別の定めがある場合や、労務を提供することに特別の合理的な利益がある場合を除いて、従業員に就労請求権はありません。
ただし、使用者の経営、管理上の事情による自宅待機なので、労働基準法26条により、使用者に責がある場合の休業となり、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。
なお、そもそも自宅待機の必要がなかったり、会社側の不当な目的で自宅待機をさせると考えられる場合には、使用者側の裁量権を逸脱する待機命令となり、無効とされます。

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