普通解雇が、契約法上の解約であるのに対して、懲戒解雇は、企業秩序違反に対する制裁としての懲戒処分のひとつで、両者は性質が違います。
普通解雇と懲戒解雇の違いとして、懲戒解雇の場合、一般的には、退職金が支払われないという不利益が生じます。
懲戒解雇も懲戒処分の一種なので、下記の要件をみたす必要があります。
① あらかじめ就業規則で懲戒の種別及び事由を定めておく必要がある。
(フジ興産事件・最高裁平成15年10月10日)
② 労働者に理由の告知・弁明の機会を与える必要がある。
③ 解雇事由として、懲戒処分という大きな不利益を与えてもやむを得ない事由があること。
④ 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当な範囲を超えていないこと(労働契約法15条)。
労働者の行為・態度を理由とする解雇として、「普通解雇」と「懲戒解雇」があります。
従業員の法令・規則違反を理由とする場合でも、就業規則の懲戒規定による懲戒解雇でなければ、法的には普通解雇となります。無断欠勤、遅刻、態度、仕事のミス、不正行為などの勤務態度、出向・配転命令への拒否、時間外労働の拒否など会社内での労働者の業務命令違反、会社外での犯罪、不貞行為などの社外非行など、労働者の行為・態度を理由として解雇を考える場合は、違法・規則違反行為が実際にあったかどうかの検討と確定が必要です。噂や通報、報道だけで事実を断定して解雇することは避けて下さい。
また、従業員がミスを繰り返したが、ミスが将来においてもそれが繰り返されるか、ミスが、労働者が遵守しなければならない会社の指導方針や職務遂行方針に抵触するような重大なものか、これにより円滑な業務運営が阻害されたか、従業員が命令に従わなかった理由が使用者側にないか、ミスを犯したことに対して、どのような注意を何回行い、改善のための努力を行ったか、解雇以外に手段がかなったかも考慮して下さい。
このような場合には、信頼関係が維持できないため、労働契約を解消したいと考えるのが一般的ですが、一旦労働契約が成立した以上は、経歴詐称していても、些細な経歴詐称では解雇は認められず、事前に真実が判明していれば採用しなかった場合や、同一条件では契約しなかったような重大な経歴詐称である場合に限り、懲戒解雇が認められる可能性があります。
会社側は、雇い入れる際に必要かつ合理的な範囲で労働者に経歴や実績の申告を求めて確認しておくべきです。
懲戒解雇には、懲戒の根拠となる就業規則等の規定があることと、解雇権の濫用(労働契約法15条、16条)にあたらないことが必要です。
就業規則等で「私生活上、会社に不利益な行動を取らない」という誠実義務を定めていることや、SNSの濫用を制限する規定を設けていることもあり、職場外や勤務時間外での行動でも、会社への義務が課されて、これら義務違反を理由とする懲戒権行使の根拠となることがあります。
SNSで会社や上司の批判した場合、その内容が事実を歪曲したり、一方的な誹謗中傷にあたるものであれば、会社への義務違反として懲戒事由になる可能性があります。
もっとも、SNSに投稿した目的が会社の業務の改善を図るためであったり、労働者が労基署に相談に行き、会社が労基署から改善を求められていたり、労働者が反省の態度を見せている場合には、解雇権の濫用となる可能性があります。