同一労働同一賃金

非正規社員・再雇用社員の同一労働同一賃金

正社員と非正規社員の格差是正

業務内容や職務の責任が同じ正社員と非正規社員について、基本給や諸手当の格差を設けることは認められますか。

同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間では、合理的根拠がない限り、待遇差を設けることは認められません。
基本給、昇給、賞与、各種手当(車両手当、通勤手当、給食手当、通期手当、皆勤手当)だけでなく、教育訓練や福利厚生等についても、正社員と非正規社員の職務の実態に違いがなければ同一の取り扱いをする必要があります。
逆に、同じ部署でも経験・責任・熟練度に差があれば、これに応じた待遇を行うことが認められます。

再雇用嘱託社員の賃金

定年後に従業員を再雇用するにあたり、どの程度の賃金を支払えばいいでしょうか。

同一企業・団体の正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間で不合理な待遇差を行ってはならず、同じ仕事であれば同じ賃金を支払うべきであるとして、同一企業での同一労働同一賃金が求められています。
もっとも最高裁は長澤運輸事件判決で、定年後に1年ごとの有期契約の嘱託社員とした従業員について、定年前の職務の内容や配置差異がなかったとしても、約20%程度の給与減額をすることは合理的であるとしています。これは年金を受給できることや、定年による退職金を受給していることを前提とした判断とされています。
なお、定年前と定年後とで、職務の内容と職務の内容及び配置の変更の範囲が同一でない場合には、同一である場合よりも、ある程度低い割合となったとしても不合理ではないと判断されることがあります。

同一労働統一賃金と合理性判断基準

同一労働に対して、人によって異なる給与額を支給することが合理的と判断される要素は何ですか。

下記の種々の要素から判断してください。
① 職務の内容
責任が重いか、権限が広いか、ノルマの義務があるか、クレーム発生時の対応責任があるか、残業があるか
② 配置・異動の範囲
配置転換を受ける立場にあるか、勤務地の異動があるか
③ その他
職務が経験に基づくものか、他の従業員の給与をどのように扱ってきたか、定年後の再雇用であるか、嘱託であるかなども考慮してください。

正社員と非正規社員の労働条件の均衡

非正規社員は正社員とどの程度の格差を設けることが可能でしょうか。

同一企業で、正社員と非正規社員の、基本給や賞与などの待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます(不合理な待遇差の禁止)。
これにより賃金に差がある場合、手当、福利厚生に差がある場合、教育訓練に差がある場合には、会社側に合理的理由が求められることになります。
また非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることができ、事業主は、パートタイム労働者・有期雇用労働者への待遇に関する説明義務を負います。
なお、「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」の紛争は、都道府県労働局で、無料・非公開の紛争手続が制度化されています。

定年と賃金

定年時期

会社は60歳を定年としていますが、引き上げなければいけないのですか。

いいえ。
高年齢者雇用安定法は、高年齢者雇用確保措置として、定年を65歳未満としている事業主は、社員を65歳まで雇用するため、①65歳までの定年の引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年の廃止のいずれかを実施することを求めており(高年齢者雇用安定法第9条)、いずれかの制度を採用することとなります。

60歳未満を定年とする就業規則

就業規則で、定年を59歳とすることは許されますか。

許されません。高年齢者雇用安定法8条により、定年は60歳を下回ることはできません。
また65歳未満の定年制度を定めている場合には、高年齢雇用確保のための、①65歳までの定年の引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年の廃止のいずれかを実施することが求められています。

定年後の再雇用

継続雇用制度

継続雇用制度とは何ですか。

継続雇用制度は、雇用する高年齢者を、本人が希望すれば定年後も再雇用する制度をいい、希望者全員を対象とする必要があります。なお、継続雇用先は自社のみならずグループ会社とすることも認められています。
事業主が継続雇用制度を導入する場合、希望者全員を対象としなければならず、また再雇用を受けるかについて、労働者の意思を確認する必要があります。

再雇用制度と非正規雇用

継続雇用制度を採用して、定年退職者を継続雇用するにあたり、嘱託やパートなど、従来の労働条件を変更する形で雇用することは可能ですか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形態でもいいですか。

継続雇用後の労働条件は、最低賃金などの雇用に関する法規制の範囲内であれば、嘱託やパートとすることも可能です。労働時間、賃金、待遇などに関しても、事業主と労働者の間で決めることができます。

有期労働契約と継続雇用

有期契約労働者についても、60歳以降の継続雇用は必要ですか。

原則としては、必要ありません。高年齢者雇用安定法9条1項は、期間の定めのない労働者について継続雇用を確保するために導入されたものです。

派遣社員と同一労働同一賃金

同一労働同一賃金と派遣社員

派遣社員についても、同一労働同一賃金が適用されますか。

2020年4月に、派遣社員について同一労働同一賃金を実現するための改正労働者派遣法が施行されました。
もっとも、派遣社員の同一労働同一賃金を実現する主体は、派遣先ではなく、派遣元であり、その方式として「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」があります。詳しくは下記をご確認ください。

派遣社員と派遣先均等・均衡方式

派遣社員の同一労働同一賃金に関する、派遣先均等・均衡方式とは何ですか

派遣元と派遣先が協力し、派遣先の正社員の待遇に適合するよう、「同一労働同一賃金」を実現する方式です。その際、①職務内容(業務内容・責任の程度)、②配置の変更範囲(人事異動・昇進昇格・転勤など)について、派遣先の正社員と同じである場合は、基本給や各種手当の待遇を正社員と同じ扱いにしなければなりません。
なお「派遣先均等・均衡方式」を採用した場合には、派遣社員の派遣先が変わるたびに待遇が変わることになります。

派遣社員と労使協定方式

派遣社員の同一労働同一賃金に関する、労使協定方式とは何ですか。

派遣会社と派遣社員の協議を経て、派遣社員とその地区で同種業務に従事する正社員の平均賃金と「同一労働同一賃金」を図る方式が「労使協定方式」です。
「派遣先均等・均衡方式」を採用した場合には、派遣社員の派遣先が変わるたびに待遇が変わることになるため、就業地域や職種ごとに厚生労働省が示すデータをもとに、労使協定で平均的な賃金と同等以上となる賃金を定めることとしたものです。

同一労働同一賃金と有期雇用契約

正規社員と有期雇用労働者、パートタイム労働者の間であれば、異なる賃金を支払うことは認められますか。

パートタイム労働者及び有期雇用労働者について、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)により正規雇用労働者との不合理な待遇差が禁止され不合理な待遇差を行ってはならず、同じ仕事であれば,同じ賃金を支払うべきであるとされました。大企業は令和2年4月から、中小企業については令和3年4月から施行されています。

お気軽にご相談ください。