相続放棄と相続分の放棄の違いを教えて下さい。
①相続放棄では、相続が開始したことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申述を行うことが必要ですが、相続分の放棄では、時期や方式に制限はありません。
但し、調停などで相続分の放棄を行う場合は、相続分放棄の証明書に本人の署名と実印の押印し、印鑑登録証明書の添付をして提出する必要があります。これにより、家庭裁判所から排除決定を受け、当事者としての地位を失うことになります(家事事件手続法43条1項・258条)。
②相続放棄は、資産も負債も共に承継を拒否するものですが、相続分の放棄は、相続財産の承継を放棄する意思表示であり、相続債務の負担は免れません。
③相続放棄では、相続財産が他の相続人に帰属することになりますが、相続分の放棄では、当該相続人の相続分を、他の相続人が、もとの相続分割合で取得することになります。
たとえば、相続人が妻と子2人の場合で、子の1人が相続放棄するのであれば、妻が全体の2分の1、子のもう1人が残りの2分の1の相続財産を取得するのに対し、相続分の放棄であれば、妻が3分の2(2分の1+(4分の1)×(3分の2))、子のもう1人が3分の1(4分の1+(4分の1)×(3分の1))の相続財産を取得することになります。
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