使用者は、従業員が新型コロナに感染し、その疑いがあれば、直ちに就業制限ができるのでしょうか。
行政が就業制限や入院勧告できるのは「感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務」(同法18条)で、「飲食物の製造、販売、調製又は取扱いの際に飲食物に直接接触する業務及び接客業その他の多数の者に接触する業務」に限定されています(同法施行規則11条2項3号、令和2年厚生労働省令第9号)。
一方で、労働安全衛生法68条および労働安全衛生規則61条1項1号は、「病毒伝播の恐れのある伝染性の疾病にかかった者」の就業禁止を定めていますが、労働省労働基準局長通達 基発第207号、第4、1項は、「伝染させるおそれが著しいと認められる結核にかかっている者」に限定しているため、現段階では新型コロナは、労働安全衛生法による就業禁止の対象にはなりません。
もっともこれらの業務に該当しない場合にも、使用者は、職場環境と労働者に関して安全配慮義務に基づき、かつ職場の秩序維持のため、出勤停止の業務命令を発する必要があります。念のため産業医や専門家への相談を踏まえて、その結果を持って休業命令を出すことが望まれます。
なお、職務の継続が可能である場合でも、無症状病原体保有者である恐れがあるので、休業手当を支給してでも自宅待機を要請することを検討して下さい。
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