不貞行為(民法770条1項1号)は、離婚事由の一つです。しかし、不貞行為が1回程度であれば、直ちに婚姻関係が破綻したと認定できるのかは微妙な問題です。
もっとも、一般的には写真やメール、LINEなどの証拠から、不貞を繰り返していると考えられる場合には、離婚が認められるケースもあります。
また、不貞行為と合わせ、暴力が認められる場合や、生活費を払わないなどの事由が認められる場合には、婚姻破綻が認められるとして、離婚が認められる場合があります。
不貞行為について、最高裁判所は、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこととしています。
性的関係を結ぶとは、貞操義務に違反して肉体関係を持つことをいい、婚姻した夫婦・婚約・内縁関係を問いません。また貞操義務に違反して肉体関係を有したとはいえない場合は、不貞行為に当たらず、770条1項1号の離婚事由にも当たりません。
しかし、デートやキスの回数や場所、宿泊を伴っているかという点から、不貞行為があると認定されることもあります。また性風俗店についても、頻度やラブホテルを利用する場合には、不貞行為を認定されたり、婚姻を継続しがたい重大な事由(770条1項5号)を認定して、離婚を認容する判決になる場合があります。恋愛感情がない、配偶者が相手にしてくれないからやむを得ないとの反論は、不貞行為の事実を否定する理由にはなりません。
不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、性的関係を結ぶとは、貞操義務に違反して肉体関係を持つことをいいます。肉体関係とは、一般的に性交を指しますが、性交に至らなくとも、貞操義務に違反する親密な交際や性行為類似行為をした場合には、770条1項5号の不貞行為に当たり、同性愛による場合でも、離婚事由に該当します。
不貞行為をした側からも、家庭裁判所に対して離婚調停や離婚訴訟を申立て・提起することはできます。
但し、配偶者から離婚を拒まれる場合には、調停は不成立となり、また離婚訴訟では請求が棄却されることがあります。
一方で、離婚の条件、例えば配偶者に払う解決金額や財産分与の内容によっては、相手の配偶者が離婚を承諾することもあり、調停や訴訟上の和解により離婚が成立する場合があります。この点は配偶者の納得や考え方次第です。調停や裁判の進め方は、弁護士にご相談下さい。
民法770条1項の離婚事由があっても、離婚を求める側に不貞行為があると、離婚請求は棄却されます。
但し、(1)別居期間が、夫婦双方の年齢や同居期間の比較し、相当長期間である場合、(2)未成熟の子がいない場合、(3)離婚しても、精神的・社会的・経済的に苛酷な状態に置かれない場合には、離婚が認められる場合もあります。
(1)別居期間は、5年か、8年か、という期間だけで決まるものではありません。また(2)未成熟の子か否かは、子どもの成長・発達・病状の程度によります。(3)は、相手の収入、相手に支払う養育費額、慰謝料額によります。
元の生活に戻った事情によります。不貞を許していないものの、経済的理由や教育のため、やむを得ず同居を続けているのであれば、婚姻破綻状態が続いていると考えられるので、離婚事由は消滅していません。不貞行為によって、婚姻関係が元の生活に戻れない程度に破綻しているかどうかが判断要素です。
明白な不貞行為を立証できた場合には、100万円から200万円の範囲とされていますが、数十万円程度のことも、逆に300万円を超えることもあります。また、慰謝料は、精神的な苦痛に対する金銭賠償ですので、精神的苦痛の度合いが大きいほど金額が増えます。たとえば、不貞により婚姻関係が破綻に至り、配偶者と別居に至った場合や、婚姻期間が長期で安定した生活を送っていた場合、不貞の期間が長期で、行為として悪質と評価される場合、小さな子どもがいて、不貞により家庭が被る影響が大きい場合、不貞相手と同居を始めたり、子どもまで生まれていた場合には、慰謝料額は上がることになります。
不貞行為は、理論的には、不貞行為をしたもの同士による共同不法行為として、不貞をした者それぞれが連帯して責任を負うことになります。
そのため、仮に不貞相手に対してのみ損害賠償請求訴訟をして慰謝料が認められると、これが全ての損害金であるとして、本来、不貞をした配偶者に対しては、更に慰謝料を請求することができないはずです。
しかし裁判では、不貞をした配偶者に対する慰謝料が、別途認められることがあります。これは、不貞相手と不貞をした配偶者に対する裁判を別々に行ったことにより、それぞれの違法性・悪質性の度合いを考慮して、別々の損害賠償を認定することによるものです。
また、不貞をした配偶者については、不貞の慰謝料だけではなく、離婚をすることに伴う精神的苦痛が加味され、より高額になることもあります。
慰謝料はあくまでも、個々の不法行為(不貞行為)に対して発生するものなので、慰謝料支払後に新たな不貞行為を行った場合には、たとえ同じ相手であったとしても、損害賠償の支払義務が発生します。ただし、新たな不貞行為時には、夫婦の婚姻関係が既に破綻しており、不貞行為をされても精神的苦痛は生じていないと評価されることがあり、この場合には、慰謝料は認定されません。
もっとも、不貞行為をされた配偶者が婚姻継続を望んでいるなどの事情があれば、婚姻破綻が認定されることは少ないのが実際です。
慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償金なので、離婚の際に、相手の不貞を知らなければ、苦痛は生じておらず、慰謝料請求権が発生しないようにも思われます。
しかし、離婚後に不貞を知って精神的苦痛を被ることもあり、また不貞の事実を知っていれば離婚していなかった場合もあります。
従って、離婚後に配偶者の不貞を発見した場合でも、慰謝料請求ができる余地はあります。但し、離婚の際に、既に婚姻関係が破綻しており、関係修復の見込みがなかった場合や、離婚時の合意で、今後相互に何も請求をしないとの合意(精算条項)をしていた場合には、元配偶者への慰謝料の請求は難しいと考えられます。
贈与契約は、履行の終わった部分を撤回することができないので、動産を贈与して引き渡すと、もはや撤回することはできません(民法550条)。また不倫・不貞は、不法行為に該当するので、「不法な原因のために給付をした」ものとして不法原因給付にあたり、返還を求めることはできません(民法708条)。
もちろん、相手が任意で返却に応じるのであれば、問題はありません。
民事調停により、謝罪、接近・接触等の禁止を求めて話し合いをすることは可能です。
民事訴訟を提起した場合でも、名誉毀損に該当する限りで、名誉を回復するのに適切な処分としての謝罪広告を求めることはできますが、直接の謝罪行為を求めることはできません。
また人格権に基づいて接近・接触の禁止を求めることはできますが、認められることは少なく、また強制力もありません。
結局、民事裁判で浮気相手に対して請求できるのは、不法行為による損害賠償です。ただし、十分に協議した結果、訴訟での和解をする場合には、謝罪、連絡・接触の禁止、退職を約束すること、これに反した場合には違約金を支払うことを合意することも可能です。手続については、弁護士にご相談下さい。