残業代請求について

残業代請求

残業代請求権の時効

残業代請求権の時効期間は、何年ですか。

令和2年3月31日以前の労働基準法では、残業代請求権の時効期間は、請求できる状態(起算点)になってから2年でした。残業代請求権の時効の起算点は、一般的に、残業代が支払われるはずの給与支給日です。

もっとも令和2年4月1日以降は、残業代請求権の時効期間が3年に延長されました。

そのため、令和2年4月1日以降に支払われる賃金・残業代は、3年の時効期間となります。

なおそれ以前に支払われるはずだった賃金・残業代の時効期間は、引き続き2年です。


残業代の割増賃金

どのような場合に、残業代として割増賃金を払わなければ行けませんか。

労働基準法は、1日8時間、1週間40時間の法廷労働時間を定め、それを超えて働いた場合には時間外労働となり、25%以上50%以下の割増賃金を支払わなければならないとしています。

もし就業規則で1日の就業時間を7時間としていた場合、あと1時間残業しても、法定内の時間外労働として、1時間分の残業代は払わなければなりませんが、割増分を支払う必要はありません。

他方、1時間を超え、1日合計8時間以上の労働をした場合には、超えた時間分の割増し賃金を払う義務があります。


残業代・休日出勤代の計算方法

残業代・休日出勤代の計算方法を教えてください。

まず、割り増し賃金については、概ね下記のようになります。

① 1日8時間、週40時間を超える時間外労働

通常賃金の25%割増

② 休日労働(1週1日、4週4日の法定休日に労働)

通常賃金の35%割増

週休2日の事業所で、うち1日出勤することは休日労働に当たりません。

③ 深夜労働(午後10時以降午前5時まで)

通常賃金の25%割増

割り増し割合に従った残業代の計算は下記の方法によります。

① 給与が1時間あたりいくらになるか計算します。

  基礎となる1ヶ月の収入は、基本給の他に、原則として諸手当を加算した数値となります。

② 時間外労働、休日労働、深夜労働の各労働時間を、タイムカードや勤務記録から確認します。

③ 割増賃金の割合をこの時間にかけて、割増賃金の合計を計算します。


残業代の遅延利息

未払いとなっている残業代の遅延利息は何%ですか。

遅延損害金とは、残業代が未払いになっている期間に対応した遅延利息としての損害金です。利息と同じように年率で日割り計算となり遅延日数に応じて加算されるので、遅延日数が長くなるほど高額になります。

令和2年4月1年に民法が改正されるまでに発生した未払残業代の遅延損害金は、勤務先が営利目的の会社であった場合には、年6%、非営利目的の会社であった場合は、5%でした。

しかし、令和2年4月1日の民法改正により、それ以降に発生した遅延損害金の利率は5%に統一されています。

なお、退職した従業員の未払い残業代は、民法の改正前後に関係なく、賃金の支払いの確保等に関する法律により、年14.6%とされています。

年利14.6%というのは、10万円の不払いで、1日あたり40円、30日あたり1,200円、1年(365日)で14,600円と、とても高額です。


残業代訴訟

会社への残業代支払いを求める訴訟をするために必要な資料を教えて下さい。

残業をした場合、管理監督者などを除いて、会社は残業代を支払う義務があり、支払を怠ると会社への罰則も設けられています。また深夜割増賃金は管理監督者を含む全労働者に支払う必要があります。

残業は、タイムカードが証拠となります。また、出社・退社時刻を記載した日報や、毎日記録した手帳のメモ、会社で使用しているパソコンのログオン・ログオフの履歴など、労働時間が客観的に裏付けられるものが重要です。残業中に会社から発信したメールも資料となります。

その他、就業規則や給与明細も必要となります。


未払い残業代請求への対応

従業員から未払い残業代の請求をされた時の、会社の対応方法を教えてください。

まず従業員が、管理監督者に該当しないかの確認をして下さい。

該当しない場合には、残業が発生しているのかどうかを、タイムカードや出退勤記録、パソコンのログ記録から確認して下さい。

残業が発生している部分は、法定労働時間内か時間外かの確認をして下さい。

そして、1時間あたりの賃金(月の所定賃金額÷1ヶ月の平均所定労働時間数)から、未払い残業代を計算してください。

時間外労働時間と割増率をかけ算することで残業代を計算できますが、会社側では、労働者側の計算の基礎となっている数字が正確であるかを、十分に検討して下さい。未払残業代の請求をされても、必ずしも残業代が発生しているとは限りません。

時間外労働の時間の根拠、休憩時間の計算方法、1時間あたりの賃金の根拠が示されていない場合には、労働者側の根拠の提示を求める必要があります。


支払い給与からの天引き

研修費用の給与天引き

従業員の研修費用を給料から天引きしていますが、問題がありますか。

当該従業員に無断で天引きすることは、認められません。労使協定、又は本人の同意が必要です。


給与天引きと労使協定

給与から天引きできる項目は,何ですか。

労働者の了解を得なくても、給料から天引き可能な項目は,①税金(所得税、住民税),②社会保険料,③雇用保険料に限られます。

それ以外について急所から天引きする場合は、個別に合意するか,労使協定で定める必要があります。社員旅行のための積立金やレクリエーションのための親睦会費などは,原則として労使協定を締結し、少なくとも控除対象の内容及び控除される賃金支払日を定めておく事が求められます(労基法24条)。ですので,勝手に天引きすれば違法行為となります。


みなし残業代、固定残業代

みなし残業代、固定残業代の要件

みなし残業代、固定残業代として、給与に上乗せして固定額を支払っている場合には、残業代を支払う必要がないですか。

みなし残業代、固定残業代とは、残業代を予め固定給に含める労働契約です。使用者からすると、固定残業代で残業代は支払っているとの認識を生じがちです。

しかし、みなし残業代、固定残業代といえるには、下記の要件を全て満たす必要があります。

① 従業員への周知

口頭ではなく、就業規則、労働契約書、郎党条件通知書などの書面で明記する必要があります。

② 固定残業代金額の明示

みなし残業代、固定残業代に相当する額が明示されている必要があります。「月給25万円(固定残業代を含む)との記載だけでは、無効です。

③ 対応残業時間の明示

みなし残業代、固定残業代金が明示されたとしても、何時間分の残業に相当し、いくら払うのか明示することが必要です。

また、賃金単価とみなし残業代が整合しない場合や、場合によってはみなし残業代が最低賃金以下の場合すらあるので、気をつけてください。


あいまいな記載の固定残業代、みなし残業代

従業員募集要領や、労働契約書に、次のような固定残業代・みなし残業代の記載をすることは問題ないでしょうか。 ① 月額25万円(みなし残業手当40時間分含む) ② 月額28万円(一律残業手当を含む)

①は、残業代相当額が不明です。

②は残業代の時間や金額が不明です。

これらは固定残業代の記載として無効になる可能性がありますので、固定残業代に該当する額や、その対応残業時間を明示する必要があります。


固定残業代,みなし残業代と追加の残業代

みなし残業代、固定残業代の形式と要件を整えていれば、その他の残業代を払う必要はないですか。

みなし残業代、固定残業代を払っていても、事前に予定した特定の時間に対する残業代に過ぎないため、これに該当する残業労働時間を超えた賃金は、別途残業代を支払う義務があります。

なお、そもそも時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定、労働基準法第36条)で1ヶ月あたり法定労働時間より45時間を超える残業が禁止されているので、みなし残業代も45時間を超えるものであってはなりません。


付加金

残業代と付加金

未払い残業代の付加金について教えて下さい。

付加金とは、裁判で未払い残業代を請求されたときに裁判所の裁量により課されるペナルティで、金額は未払い残業代に相当する金額と同等となるため、本来の残業代の2倍の金額を払う結果となります。

さらに遅延損害金も加わるので、全体として相当大きな金額になる危険があります。

ですので、未払い残業代が発生していることが明らかであれば、裁判所による判決での金額明示を待つことなく、労働者側との交渉により、和解で支払い額を決めるのが無難です。


36協定

36協定について

36協定とは何ですか。

36協定(サブロク協定)は、雇用者が労働者に時間外労働・休日労働をさせる場合、締結しなければならない労使間の協定です。36協定を締結した場合には、労働基準監督署に届出る必要があり、義務を履行しなければ6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられる罰則も適用されます。

労働基準法は、労働時間の上限を1日8時間、1週間40時間と定めています。これを超えて残業させたり、休日労働をしてもらう場合には、必ず事前に労働者側との間で36協定を締結しておく必要があります。


36協定の締結と残業の上限

36協定を定めて労基署に届け出た場合、どの程度残業を求めることができますか。

時間外動労の上限として、1週間に15時間、1か月に45時間の制限があります。ただし臨時的な場合に36協定で定めた時間を延長できるという「特別条項付き協定」とすることで、法律の定める上限を超えることも可能です。もっとも、下記の厳格な要件が必要です。

① 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定めること

② 限度時間を超えて時間外労働を行わなくてはいけない特別な事情を具体的に定めること

③ 延長期間を延長する場合の、労働者と使用者との間の手続を定めること

④ 限度時間を超える一定の時間を定めること

⑤ 限度時間を超えることができる回数を定めること

⑥ 限度時間を超えて労働させる一定期間の割増賃金率を定めること


管理監督者

名ばかり店長と残業代

入社後、飲食店店舗の店長となりました。店長は管理職だから残業手当は出ないと言われたのですが、残業手当はもらえないのでしょうか。

労働基準法では、事業の種類にかかわらず監督もしくは管理の地位にある者や、機密の事務を取り扱う者には、年次有給休暇や深夜労働の規定を除き、労働基準法が規定する労働時間、休憩および休日に関する規定を適用しないとしています。

「監督もしくは管理の地位にある者」(管理監督者)は、労働条件の決定、労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされ、役職の名称にとらわれず職務内容、責任と権限、勤務態様、賃金等の待遇の観点から実態に即して判断するとされています。

店長との肩書きでも、経営方針の決定、労務管理上の指揮権限、自己の勤務時間の自由裁量権限が与えられている場合には、管理監督者といえますが、これら権限がなければ、法定労働時間が適用される労働者として、時間外手当の対象となります。ただし、役職手当や職務手当が固定の残業代支払いと認められれば、これらを差し引くことはできます。


管理監督者

使用者側に残業代の支払い義務がない管理職といえるための定義は何ですか。

管理監督者かどうかは、以下の点を総合的にみて判断されます。

① 下記のような職務と権限が与えられているか

経営方針の決定
従業員の労働条件・採用の決定
遅刻・欠勤の承認などの労務管理上の指揮権限

② 出退勤について勤務時間が拘束されず、遅刻・早退をしても減給や懲戒処分をされない自由裁量権を有するか

③ 賃金面で、残業代を払われなくとも、その地位に相応しい待遇がなされているか

名ばかり店長を主張して残業代を請求しつつも、裁判所が管理監督者を認定するケースもありますので、慎重にこれまでの実体を検討して下さい。

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